三春屋ニイサンの肘折温泉日記

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「ああ、うるいの納豆和えだね。」

「そうよー、美味しいのよー。」

「ナニ？南蛮醤油をかけてるの？」

「そうよー、ぴりっとして美味しいのよー。」

「三年ものだもんな。」

「三年も時間をかけて熟成させたのよー。」

「この前俺がだしたんだから知ってるよ。」

うちの三年物の南蛮醤油。ぴりっと辛くてでもまろやか。美味しいよ。

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「こごめだね。」

「こごめよ。」

「結構立派だね、天ぷら？」

「そう、立派よ。天ぷらにするわ。」

「俺の採ってきたやつ？」

「ちがうでしょ。今年は何にも採ってないじゃない。」

「去年の今頃は採れてたのになー。」

「しょうがないでしょ。」

時々見に行ってるんですが、まだ何も出ていないんですよ。ほんとに。


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朝、まず何をするのか？

そう、朝ごはんを出すのです。誰に？

お客さんに。いえその前に仏様と神さんに。

水とお茶と砂糖湯をあげて、ご飯をあげるのです。







｢あれ、仏様のご飯からよそってるの？｣

｢あー、間違えた。神さんからよそうんだった。いやね。｣



「こっちが先だったわ、いやね。」

「どうして神さんが先なんだ？」

「なんでかな。」

「なんで？」

「神様仏様、って言って手をあわせるでしょ。神様が先ね。」

そうかなー。屁理屈？


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｢南蛮醤油がなくなったよ。｣

｢だすわね。」





｢ほお、これはいつ漬けたやつだ？｣

「みてー。」



三年物である。麹ととんがらしを醤油で漬けこむのである。漬けこめば味が辛いなりにまろやかになるのである。

御浸しにかけたりして、辛いけどおいしいよ。


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｢今日はタラの芽があるんだね。｣

｢あるのよ。」

｢どこで採ってきたんだ？誰が？｣

｢まだ出ていないわよ。これは買ってきたのよ。｣

｢どこで？」

｢秘密。｣

今年は山菜が遅くて、まだ取りに行けないので。

｢くそっ。去年の今頃は俺のタラの芽が出せたのに。」


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｢今日は茶碗蒸しかー。｣

｢そうよ。美味しいわよ。｣

茶碗蒸しはあまり好きではない。のだがうちのは好きなのです。美味しいのですよ。

｢食べよう。味見だ。今日も美味しくできたかな。｣

｢ないわ。｣

｢えっ俺の味見用の茶碗蒸しだけど。｣

｢ないわ。」

｢なんで、いつもあるじゃないか。｣

｢今日はちょうどしかできなかったのよ、ホラ。｣



｢いつも余るじゃないか！｣

｢ちょうど作って怒られるなんて信じられないわ。馬鹿じゃないの。｣

｢余してちょうだい。うちの茶碗蒸しが好きなんだから。」

｢ちょうどで作ったんだから最高なのよ。材料が無駄にならなかったんだから。｣

「・・・・。」

でもうちの茶碗蒸ししか食べられない俺のために作ってくれてもいいじゃない。


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｢お客さんがね、馬刺しを注文したいんだって。｣

｢今日は馬刺しじゃなくて牛肉のたたきを作るわ。たたきは如何って聞いてきてちょうだいな。｣

｢聞いてきた。」

｢なんて？」

｢牛肉のたたきがあればそっちの方がいいって。｣

｢オーケー。美味しいわよ。｣

｢ところで牛肉はあるのか？｣

｢あるわよ。じゃーん。」



｢俺の肉じゃないか―。｣

｢いいじゃない。お客さんのためよ。残ったらあげるから。｣

｢採算採れるのか？俺のおかずー。えーん。｣

｢いいから。見てて。」

小さなフライパンで満遍なく焼き目をつけて、

カネのボールをぴったりかぶせて弱火で火を通して、

火を消してからアルミホイルでしっかり包んで肉を安定させる。(余熱利用)

｢さあ、切るわよ。」



お美味しそうだ。

｢さあ、盛りつけるわよ。｣



｢ほーら、美味しそうよ。｣

｢美味しそうだなー、売り上げは俺がもらえるの？｣

｢だめ。｣

駄目だそうです。材料は俺の肉なのに。

牛肉のたたき、今日は一人前800円です。基本的には時価です。

たまにしかありません。


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｢今日は鯉を使います。｣←にょーぼ

｢恋？｣←ルーシーさん。

｢違う。なんかアクセントが違うんだよね。｣



｢ほらこれは何？｣

｢恋。」←ルーシーさん。

｢鯉でしょ。」

｢濃い。」←ルーシーさん。



｢鯉だけどね。｣

｢難シイネ。日本語。」

｢この橋渡るべからずって言ってごらん。｣←俺。

｢コノ端ヲ渡ルベカラズ、カナ。」

｢おお！一休さん並みだぞ、あんた。｣

｢ナニガ？」

｢頓知だよ、頓知。」

｢？？？。」

｢やめなさい。フィリピンで一休さんなんか見てるわけないでしょ。｣

このお話はわかりずらくて申し訳ない。

子供の頃アニメの一休さんを見ていた人にしかわからないだろう。


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尾花沢からおいでになってるＯさん。

｢ちょっとおいで。」

｢はい、はい、どうしたんですか？」

｢聞いてよ。私は腰が悪くてこんなだったのよ。｣



｢ああ、いてて、ああ、いてて。って感じだったのよ。｣

｢ふんふん。」

｢でもね、あんたんちのお湯につかるとね、こんな感じ。」



｢いえーい、ってかんじ。うふふ。」



「よくなったのか。よかったねー。」

｢あんたんちのおかげだよー。来てよかったよー。｣

よかったねー。腰がよくなって。やっぱりうちのお湯は効くよねー。

このお話はお客様の了解を得て再構成いたしております。


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一生懸命夕げのお膳を作っていた時のことだとさ。

三人(俺、にょーぼ、ルーシー)同時に気がついたとさ。



｢あれ？」

｢あれ？」

｢アレ？」



｢お釜に新聞がかかってる？｣

｢炊飯器に新聞？｣

｢読売新聞？｣

｢キィーヤー！」

｢アアーレー！｣

｢ドウスンノヨ！ミンナオ腹スカシテルヨ！」



｢今から炊くんだ！｣

｢マニアウカナー。」

｢みんなで祈るのよ！｣

祈りは通じました。少し夕飯が遅れたけどね。


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